死に物狂い

他人から影響を受けやすい人間のフィクション日記

もう一度、Wake Up, Girls!に「ありがとう」を

 全てが終わったその後の、あの日の景色を覚えているか。

「終わった」けれども清々しい、そんな気持ちを覚えているか。

 今も私の胸にある、大きな大きな「ありがとう」。

 いつになっても同じだろう、色んなものを受け取った。

 あれからようやく一年か、暦を見ながらそう思う。

 この日私はもう一度、3月8日に舞い戻る。

 それは回顧か執着か、あるいは醜い悪あがき。

 しかし気にすることもない、それも人間らしいさね。

 さあさ皆で想い出せ、あの日の時間と風景を。

 そこにあるのはSSA、ならぬVirtual SSA

 今こそ再び始めよう、寂しい楽しいパレードを。

 そしてたくさん伝えよう、真心込めて「ありがとう」。

 

  

 2019年3月8日(金)、女性声優ユニットWake Up, Girls!はさいたまスーパーアリーナで行われたファイナルライブ、『想い出のパレード』を最後に解散した。約6年間の活動だった。

 

 私が彼女たちを追いかけられたのは、解散が決まった最後の1年間だけだった。もっと早くから知っていれば、そう思うことがないと言えば嘘になるが、それもめぐり合わせというものだ。むしろ「解散」という事実によって、短期間でみるみる成長していく7人を見られたことが幸せだったと今は思っている。

 

 あの日から一年が経とうとしている。「早いな」というかは「ようやくか」との気持ちが強い。ひどく昔のような気がするのだ。しかし現実は変わらない。何はなくとも1年だ。

 

 趣旨は「解散1周年」ということでよかったのか、2020年3月6日(金)には、公式によるライブBD劇場上映会が予定されていた。併せて上映会用のグッズ通販も行われ、「解散したグループの新グッズとはこれいかに」と思いつつ、特に逡巡もなく会計を済ませていた。仕事の調整もし、当日に向け準備は万端だった。

 

 しかしながらこれもめぐり合わせというものか。当該上映会は、チケットの当落も知らされないまま、世界を騒がせている新型コロナウイルス感染症を理由に開催自粛となった。誰が悪いわけでもない。仕方のないことだ。一方で、もし去年にこのような状況であったとしたら、とつい考えてしまう。ツアー千秋楽の宮城公演、そしてこの『想い出のパレード』はきっと中止になっていただろう。後世に残るBDは今の半分2枚のみ。あの日もこの日も存在していなかった。そんな可能性など、考えるだけでお腹が痛い。そして何よりも、今まさにそのような状況に置かれている人々がいることを忘れてはならない、とも思う。

 

 ともあれ、上映会はなくなってしまった。行き場をなくした気持ちをどう処理すればよいのだろう。この時、参加予定だったワグナーの多くは同じことを考えていたのではないか。「劇場でやらないなら家で見ればいいのでは」と。あるいは、有志でオフ会でもやるかと。それは示し合わせたものではなく、各個人においてごく自然に浮かび上がってきた感情で、しかし結果的に概ね見解の一致を見るというのが、何ともWUGのライブらしく感じられた。思えば、HOMEツアー千秋楽における『ハートライン』の「WUGちゃん」コールや、SSAにおけるゴンドラに合わせて7色に変化するペンライト等、一人ひとりが突発的に「こうしよう」と思ったことが、会場に受け入れられて、加速して全体に広がっていく、あの感覚が私は好きだったのだ。それと同じものがそこにはあった。

 

 かくして、さる方々の音頭取りも経て『Wake Up, Girls! FINAL LIVE ~想い出のパレード~ BD同時再生企画』が実施された。必要なのはBDが見られる環境のみ。各地隔地からインターネットで実況する。自宅で一人参加するワグナーもいれば、複数人寄り集まって参加するワグナーもいた。わざわざSSAまで赴いた方もいる。ともすれば、本来の上映会であれば参加できなかった方もいたかもしれない。Virtual Saitama Super Arena(VSSA)という概念上の会場に、日本全国のワグナーが、あるいは海をも飛び越えて集結していたのだった。

 

 どうやらVSSAには関係者席も用意されていたらしい。一年越しのハッシュタグ「#WUG_SSA」に気付いた方々が、楽曲制作の裏話をツイートしていく。自分の好きな存在が他者からも愛されている光景を見るのは、何とも幸せなものだ。予定通り劇場上映会が実施されていれば、この景色とは出会えなかったかもしれない。もちろん「中止になってよかった」などと言うつもりは毛頭ない。ただ、これもまた一つのめぐり合わせなのだろうと、そう思うのである。

 

 ところで、今回の同時上映から想起されることが一つある。アニメの『Wake Up, Girls!新章』だ。何もかもが同じというわけではない。しかし、劇中の「ライブの中止」「中止からの再案」「同時中継」、こういった要素要素が、どこか今の私たちと繋がっているように思えた。

 

 青山吉能さん曰く、ワグナーもまたWake Up, Girls!である。ならば、私たちとアニメのWUGちゃんとの間にハイパーリンクがあったとしても、何らおかしいことはないのではないか。"第二章"初めてのライブが、"新章"と結合する。そしてそれは、例によって予定調和ではなく、偶発的に生じたものだった。そう考えれば、何ともWUGらしいとは言えないか。これもまたコンテンツが続く一つの形なのだろう。

 

 

 あの日と同様、楽しい時間はあっという間に終わった。興奮冷めやらない中、じっとTLとハッシュタグを目で追いかける。我ながらこの行動が懐かしい。自分の中に浮かんだ感情もまた、あの日と同じだった。寂しい、だけれども楽しかった。長い間おつかれさまでした。そして何と言っても覚えるのは感謝の気持ちだ。だから改めて言おう。本当に、本当にありがとうございました。